マイナ保険証とは

マイナ保険証とは、マイナンバーカードを健康保険証として利用できる仕組みのことです。従来の健康保険証と同じように、医療機関や薬局で提示することで、公的医療保険の自己負担で診療や調剤を受けることができます。

従来の健康保険証は、新規の発行が2024年12月2日に停止され、すでに持っている保険証も原則として2025年12月1日で利用を終了する予定です。その後は、マイナ保険証を利用するか、何らかの事情でマイナ保険証を使えない人には「資格確認書」が交付される形になります。つまり、今後はマイナンバーカードを使った保険証利用が標準となる流れです。

最近では、マイナ保険証をスマートフォンに搭載して使うこともできるようになりました。対応機種のスマホがあれば、マイナンバーカードそのものを持ち歩かなくても、スマホをかざすだけで保険証として利用できるようになっています。

マイナ保険証のメリット

マイナ保険証には、従来の健康保険証にはなかった利便性がいくつかあります。ここでは、代表的なメリットを3つ取り上げて解説します。

医療機関の受付がスムーズになる

マイナ保険証を利用すると、医療機関や薬局での受付手続きがスムーズになります。従来は、受付で健康保険証を提示し、初診の場合は問診票や診察申込書に氏名や住所、保険証の情報などを手書きで記入することが一般的でした。

マイナ保険証では、受付に設置された専用端末にマイナンバーカードや対応スマホをかざし、顔認証や暗証番号による本人確認を行うことで、オンライン資格確認システムが自動的に保険資格を確認します。これにより、保険証の内容を目視で確認したり、番号を打ち込んだりする手作業が減り、窓口の事務作業が効率化されます。

また、オンライン資格確認を利用することで、就職・転職・引っ越しなどで保険証が切り替わった場合でも、最新の情報をシステム側で確認できるのも利点です。保険証の切り替え直後に「古い保険証しか手元にない」といった場合でも、マイナ保険証であれば適切な保険情報で受診しやすくなります。

診療情報を確認できる

マイナ保険証を利用すると、自分の診療情報や薬剤情報をオンラインで確認できるようになります。マイナポータルにログインすると、過去の医療費情報や、医療機関での受診履歴、処方された薬の情報、特定健診の結果などを確認することができます。

複数の医療機関にかかっている場合でも、どこでどのような診療を受け、どんな薬を処方されたかを一覧で把握できる点は大きなメリットです。医療機関側も、本人の同意があれば薬剤情報や健診結果を参照できるため、重複処方の防止や、持病・アレルギーなどを踏まえた適切な処方に役立ちます。

特に、高齢の家族の通院状況を把握したい場合や、転居によりかかりつけ医が変わった場合など、情報が一元的に確認できることは安心感につながります。紙の明細書や領収書をすべて保管しておかなくても、一定期間の情報であればオンラインで見られるのも便利な点です。

窓口での一次的な限度額以上の支払いが不要となる

高額療養費制度を利用する場合、従来は「限度額適用認定証」を事前に取得して医療機関に提示しないと、いったん医療費の全額または高額な金額を立て替え払いし、後から払い戻しを受ける必要がありました。そのため、急な入院や手術のときに一時的な支払い負担が大きくなることが問題点でした。

マイナ保険証を利用すると、一定の条件を満たす場合には、事前に限度額適用認定証を用意しなくても、高額療養費制度の自己負担限度額までに窓口の支払いが抑えられる仕組みが整えられています。これにより、一時的に多額の医療費を支払うリスクを軽減でき、急な入院や長期の治療が必要になった場合でも、家計への負担を抑えやすくなります。

高額療養費制度を上手に活用したい人にとって、マイナ保険証は経済的な面でもメリットのある仕組みと言えます。

マイナ保険証のデメリット

マイナ保険証には多くのメリットがある一方で、注意しておきたい点や、人によってはデメリットと感じられる点もあります。ここでは、代表的な2つのポイントを紹介します。

システムトラブルなどでその場で使えないことがある

マイナ保険証は、マイナンバーカード（または対応スマホ）と、医療機関側のオンライン資格確認システムの両方が正常に動作していることが前提となります。カードのICチップの不具合や電子証明書の有効期限切れ、カードリーダーの接続エラー、通信障害などが発生すると、その場でマイナ保険証として認証できないことがあります。

その場合、従来の健康保険証や資格確認書の提示が求められたり、一時的に10割負担で支払って後から保険扱いに変更する手続きが必要になったりすることもあります。確率としては高くありませんが、「システムに依存する」仕組みである以上、こうしたトラブルの可能性がゼロではない点はデメリットと言えます。

特に、高齢者やデジタル機器が苦手な人の場合、カードの暗証番号や有効期限の管理が負担になることもあります。マイナ保険証を利用する場合でも、万が一のために資格確認書や別の身分証を用意しておくと安心です。

カードや情報管理に不安を感じる人もいる

マイナ保険証を利用するためには、マイナンバーカードを取得し、カードに保険証としての機能を紐づける必要があります。そのため、「1枚のカードにいろいろな情報や機能が集約されること」に不安を感じる人もいます。過去には、別人の情報が誤って紐づけられた事例なども報道され、制度そのものに対する不信感や警戒感を持つ人も少なくありません。

現在は、誤登録の全件点検や、再発防止策の徹底、アクセス履歴の記録など、運用上の改善が進められていますが、「もし情報が間違って登録されたらどうしよう」「カードを紛失したら怖い」といった心理的なハードルは残りやすい部分です。

また、マイナンバーカード自体や電子証明書には有効期限があり、一定期間ごとに更新手続きが必要になります。これらの管理を負担に感じる場合は、マイナ保険証ではなく当面の間は資格確認書を選ぶという選択肢もあります。ただし、資格確認証にも有効期限が設定されているので、ご自身が加入している保険組合などに確認しておきましょう。